看護技術

IABPとは(概要)

IABP(大動脈内バルーンポンピング)とは

IABP(大動脈内バルーンポンピング)とは経皮的にバルーンカテーテルを下行大動脈に留置し、心臓の拍動に合わせて駆動装置から供給されるヘリウムガスによりバルーンを拡張(インフレート)・収縮(デフレート)させることで圧補助を行う補助循環療法です。

IABPの効果

IABPによって期待される効果は大きく 2つあります。

・心臓の後負荷軽減効果

・心臓の拡張期の血圧上昇(冠動脈の血流増加)

IABPによる補助効果は15〜20%程度といわれています。

一つ目の効果である、心臓の後負荷軽減について。

1つ目は、心臓の収縮期直前に今まで拡張していたバルーンを収縮させることによって、「シストリック・アンローディング(systolic unloading)」 と呼ばれる心臓の後負荷軽減効果が得られます。これにより心臓は全身へ血液を楽に送り出すことができます。

シストリック・アンローディング(デフレート)

2つ目の心臓の拡張期の血圧上昇(冠動脈の血流増加)について。

心臓の拡張期にバルーンを拡張させることによって、「ダイアストリック・オーグメンテーション(diastolic augmentation)」と呼ばれる拡張期の血圧上昇効果が得られます。心臓を栄養する冠動脈は、拡張期に血液がよく流れるしくみになっており、拡張期の血圧上昇により冠動脈の血流が増加します。

ダイアストリック・オーグメンテーション(インフレート)

IABPの構成

駆動装置(コンソール)

Teleflex https://www.teleflex.com/japan/jp/product-areas/interventional/cardiac-assist/ac3-optimus-iabp/index.htmlより画像引用

駆動装置は心臓に同期して、ヘリウムガスをバルーンに送って拡張・収縮させる装置です。
付属品として外部信号(心電図、動脈圧) 入力ケーブル、心電図ケーブル、動脈圧ケーブルなどがあります。機種によってはドプラ血流計も付属しています。

駆動ガス

バルーンの拡張・収縮には、ヘリウムガスが用いられています。

ヘリウムガスは水素ガスに次いで軽い気体であり、バルーンの拡張・収縮の応答性が良いのが特徴です。水素ガスは爆発の危険性があり使用できません。しかし、ヘリウムガスは血液に溶けにくいため、バルーン破裂によるガス漏れには注意が必要です。
ヘリウムガスボンベは装置内部に格納されています。ボンベは満充填されている状態で
2カ月程度まで連続使用可能です。

バルーンカテーテル

https://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/480367/21200BZZ00537000_A_01_18/ より画像引用

基本的なバルーンの構造は、バルーン部とシャフト部から成ります。バルーンの材質は耐
久性、抗血栓性に優れているポリウレタンが用いられています。

留置位置とバルーンサイズ

バルーンカテーテルは大腿動脈から挿入し、バルーンカテーテルの先端部が鎖骨下動脈の2cm下を目安に留置します。バルーンのサイズは主に5mL, 30mL, 35mL、 40mLがあり、身長を基準に選択します。適正サイズより小さいバルーンを使用すると圧補助効果が小さくなり、大きいバルーンを使用するとバルーン長が長くなり、腹腔動脈や腎動脈をバルーンが
閉塞し血流障害を引き起こす可能性があります。バルーンシャフトの太さは7〜8Frが主流で、細径化が図られています。

IABPの駆動タイミング

適正な駆動タイミング

バルーン拡張・収縮のタイミングは、多くの駆動装置にフルオートモードが搭載されているため調整の必要がないことが多いですが、基本となる適正なタイミングを理解しましょう。バルーン拡張のタイミングは、大動脈圧上のディクロティック・ノッチに合わせます。心電図では、T派頂点よりやや遅れたあたりになります。

また、バルーンの収縮は大動脈圧の収縮期圧が出る直前に合わせ、拡張末期圧が最低になるように調整します。心電図ではP波の終了からQRS波の直前に収縮させます。IABPの適切な駆動タイミングは、アシスト比を1:2にし、IABPに補助された圧と自己圧と比較するとわかりやすいです。

トリガー

バルーンの拡張と収縮のタイミングを心臓の拍動と適切に合わせるために、主に心電図か動脈圧をトリガー(動作を開始するきっかけとなるものを指します)として用います。集中治療室では心電図トリガーが多く用いられ、電気メスなどで心電図にノイズが入る手術室では動脈圧トリガーが用いられます。
心電図トリガーの場合、心電図電板の剥がれや体位変換時は心電図にノイズが入り、不適切な作動の原因となりますので、動脈圧トリガーに変更しましょう。動脈圧トリガー時は圧ラインチューブを振動させたり、動脈血採血を行ったりするとトリガーできなくなります。最近の駆動装置は、心電図トリガーが失われた場合に動脈圧トリガーに自動で切り替えてくれる機種もあります。また、失われていた心電図トリガーが復帰すれば元に戻ります。しかしながら、今、IABPが何のトリガーをしているかを確認しておくことは大切です。
心電図や動脈圧以外にも、ペーシングスパイクにトリガーさせる方法や、人工心肺使用時などの心周期がない場合に使用するインターナル(非同期)もあります。

バルーン内圧波形

IABP駆動装置のモニターには、心電図、動脈圧のほかに、バルーン内圧が表示されています。バルーン内圧を理解することで、バルーンカテーテル、延長チューブの折れ曲がりや延
長チューブ接続部からのヘリウムガスの早期発見につながります。

①アップシュート:バルーン拡張直後の圧

②ショルダー:バルーンが拡張し内圧が安定した波形

③ダウンシュート:バルーン収縮直後の圧

④ベースライン:バルーンが収縮し内圧が安定した波形

Ⓐアップシュートやダウンシュートが丸みを帯び、鋭さがない。原因はバルーンが完全に広がっていないこと、延長チューブの折れが考えられる。延長チューブの状態を確認する。

Ⓑベースラインが徐々に下がっている。原因はヘリウムガスのリーク。
延長チューブに血液が混入していないか、チューブ接続部が緩んでいないか確認。

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