ネーザルハイフロー(NHF)とは
ネーザルハイフロー(NHF)は、専用の鼻カニューラを用いて、加温加湿されたガスを高流量(30~60L/分)で供給できる高流量システムです。
高性能加湿器と熱線入り回路を使用するため、十分な加湿が得られます。
また、専用の鼻カニューラを用いるため、患者は会話・食事が可能です。
NHFの特徴:低侵襲・高流量・加温加湿
ネーザルハイフローの適応病態
- 高濃度や正確な酸素投与が必要な症例
- 軽度の二酸化炭素貯留例
- NPPV中断時の補助
- NPPV拒否症例
- 気道内分泌物が多い症例
- 人工呼吸器離脱後
- 終末期の症状緩和

ネーザルハイフローの効果
- 吸気抵抗の減少による呼吸仕事量の減少
- 正確に酸素濃度の調節が可能
- 粘膜クリアランスの増強
- 二酸化炭素のウォッシュアウト効果
- 解剖学的死腔の減少
- 口を閉じれば1~3cmH₂O程度、気道内圧が上昇する。(PEEP作用)
吸気抵抗の減少による呼吸仕事量の減少
吸気流速が早いため、吸気抵抗が減少します。
そのため、患者は吸気しやすくなり、呼吸仕事量が減少します。
正確に酸素濃度の調節が可能
ネーザルハイフローは、30l/分以上の流速を確保できるため、正確な酸素濃度を設定できます。
粘膜クリアランスの増強
最適な加温・加湿(37度)では、気管支粘膜の繊毛運動が促進されます。
それにより、喀出しやすくなり無気肺の予防にも繋がります。
換気血流比が維持され良好な酸素化が得られます。
二酸化炭素のウォッシュアウト効果
通常、吸気以外は咽頭内のエアーは動かず、呼気がそのまま残っているため咽頭は死腔となります。
ネーザルハイフローでは、高流量のエアーが鼻腔内から咽頭・喉頭まで流れることで呼気が洗い流されます。
つまり、鼻咽頭腔の二酸化炭素が減少して二酸化炭素の再呼吸が減少します。
解剖学的死腔の減少
酸素と二酸化炭素のガス交換は肺胞で行われています。
鼻腔から気管支までの部分はガス交換には関与していません。
鼻腔から気管支までの部分を解剖学的死腔と呼びます。
成人で150ml程度存在します。
高流量による洗い流しによって、鼻咽頭腔の解剖学的死腔が50ml程度減少します。
PEEP作用
高流量の酸素投与により、吸気・呼気ともに軽い陽圧になり、1~3cmH₂O程度、気道内圧が上昇します。(PEEP作用)
しかし、口を開いてしまうと圧がほとんどかからないので、口を閉じるように指導しましょう。
ネーザルハイフローの使用

J of Critical Care(2015)3:15より引用
ネーザルハイフローは、鼻プロング、ブレンダー、加湿器、蒸留水から成り立ちます。
成人のプロングは鼻孔の50%程度のサイズを使用しましょう。
サイズはS・M・Lがあります。Sは20kg以上の小児で使用します。
高流量ブレンダー

イワキ株式会社HPより画像引用
加温加湿器

Fisher & Paykel HEALTHCARE HPより画像引用
プロング
- ネックストラップを首にかける。
- プロングを鼻に入れ、ストラップは耳の上から後頭部に回す。
- きつすぎず、ずれないようにストラップを調節する。
- ネックストラップを引き、回路の重みがかからないように調節する。
ネーザルハイフロー観察点
呼吸数増加/SPO2低下
- 鼻カニューラの亀裂や分泌物による閉塞
- 回路に結露や損傷・接続不良の箇所はないか
- 回路の確認
- ネックストラップの調整
- 結露の除去
- プロングは綿棒で清拭/必要時交換(2週間程で交換する)
呼吸器離脱後で呼吸数増加/SPO2低下の2点があれば、次のステップとしてNPPVが考慮されます。
ネーザルハイフロー開始後、約15分~1時間が呼吸状態変調の目安と言われています。
加温加湿器の温度も小まめに確認しましょう。
空焚きになっていないか、蒸留水の残量に余裕はあるか。
MDRPU(医療関連機器圧迫創傷)の発生に注意しましょう。
器具が直接皮膚に触れる部分には、エスアイエイドなどで皮膚を保護しましょう。
併せて、皮膚状態は日頃から観察しましょう。
まとめ
ネーザルハイフローは低侵襲でありながら、高流量の酸素投与と加温加湿ができる特徴があります。
しかし、呼吸器離脱後で呼吸数増加/SPO2低下がある場合は、注意が必要です。
また、加温加湿器が空焚きになっていないか、蒸留水に余裕があるか小まめに確認しないと熱傷熱傷の危険性があります。