看護診断と要因
- 長期ベッド上安静や加齢による筋力低下。
- 麻痺、装具、補助具使用のための不安定な歩行状態。
- 前庭機能障害や起立性低血圧によるめまい。
- 視神経の圧迫や外傷、眼疾患による視野狭窄。
- 視力低下。
- 抗がん薬治療や放射線療法の副作用で骨髄抑制をきたし、ヘモグロビンが低下した状態によるめまい、ふらつき。
- 糖尿病などの末梢神経障害による感覚、知覚鈍麻による歩行障害。
- 薬物の影響によるふらつきや不安定な歩行。
- 点滴、ドレーンや尿道留置カテーテルなどルート類による拘束感。
- 脳疾患、低血糖や高血糖、脱水、肝性脳症、尿毒症などによる不穏や意識レベル低下。
- 危険に対する認知力の低下。
- アルコールからの離脱によるせん妄状態。
- 世話になりたくない思いから、無理に動いてしまうこと。
- 動きたい心理と実際の身体能力のずれ。
- 術後や緊急入院など、自分のおかれている状況が具体的にイメージできないこと。
目標
- 日常生活を安全に送るための知識、行動が習得できる。
- 転倒や転落、外傷が予防でき安全に療養することができる。
- ドレーンやルート類を自己抜去しない。
看護計画
OP(観察項目)
- 意識レベル、精神状態、理解力、認知力。
- 循環機能や呼吸機能の変動。
- 麻痺、運動障害の有無と程度、ADLの状態。
- 歩行状態と補助器具の使用状況。
- 視覚・聴覚・知覚の神経障害の有無と程度(眼鏡、補聴器の使用状況)
- めまい、眼振、ふらつき、気分不快の有無。
- 排泄パターン、頻尿・便秘・下痢の有無。
- 睡眠時間、状況。
- 環境。
(入院前:住居環境、寝具など)(入院後:ベッドの位置と高さ、柵の有無、ポータブルトイレの位置、床頭台の位置、ベッド周辺や廊下の危険物。) - 活動しやすい衣服、履物であるか。
- 検査データ
(血小板、Hb、AST、ALT、BUN、Na、K、Cl、NH₃、血糖値、薬物の血中濃度。) - 脱水症状、出血傾向の有無。
- ドレーン、ルート類の状態(固定状態、部位)。
- 病状、治療の状況
(転倒・転落の原因となる作用・副作用を示す薬物の投与の有無) - 薬物の使用状況と離脱症状の有無
(振戦、せん妄、異常発汗、発熱、嘔吐、痙攣、不安)。 - 羽ばたき振戦、痙攣発作の有無と状況。
- ライスタイル
(欲求・価值観・態度·生活意識)。 - 転倒・転落アセスメントシート点数(https://www.med.or.jp/anzen/manual/pdf/score.pdf)
TP(ケア項目)
- 損傷や転倒を起こしやすい原因と患者の望む行動や生活環を把握し、アセスメントする。
- ペッド周囲の環境調整をする。
- ベッドの高さは、ベッドに座り床に足底が着く高さにする。
- ベッド柵は患者の状態に応じて安全で使いやすい位置にする。
- 布団などで手足が引っかからないように寝具を調整する。
- ナースコールを押さないで1人で移動するなど指示が守れない場合には、見守り支援機器の装着・身体抑制を考慮する。
- 痙攣発作や意識消失の可能性がある場合はヘッドギアを使用し、前駆症状やめまいのある場合は安静を促す。
- ドレーンや点滴ルート類で拘束されている患者には動き易いようにルート類を整理する。
- 不要なドレーン類がないかアセスメントし、不要であれば抜去する。
- 体動が激しいときは点滴ルートを延長するか、可能であれば生理食塩水・ヘパリンロックする。
- 動きやすい点滴架台を選択する。
- 入院前の患者の生活場所、寝具やトイレなどの環境や生活リズムに近づけるように支援する。
- 床頭台やオーバーテーブル、ポータブルトイレなど周囲の環境を調整する。
- 入院前の習慣ができる限り安全に実施できるように環境を整える。
- できる限り日中、活動を増すことで、筋力アップや気分転換ができるようにかかわる。
- 履物は滑りにくく、つまずきにくい運動靴や活動しやすい衣服を勧める。
- 排泄行動への援助をする。
- 排尿は患者の要求が切迫しないように時間間隔をみて早めに誘導する。
- 状態に応じ尿器やポータブルトイレをベッドサイドに準備する。
- ポータブルトイレが滑りやすい場合は、滑り止めマットを敷く。
- 夜間は足元の灯りや枕灯をつけ、適切な照度が保てているか確認し、病室やトイレなどは目印やラインを引き、わかりやすいように表示する。
- 歩行が不安定なときは付き添い、必要時車椅子などで移動する。
- 初めての治療や検査、手術などで環境が変化する場合は、事前に自分が置かれる環境についてイメージができるように、使用する装具(松葉杖、眼帯)を用いた練習を一緒に行う。
- 不眠で睡眠薬を服用する患者には、初回服用か、薬剤を変更していないかどうかを確認し、初回服用後は頻回に訪室する。
- 入浴、シャワー時の援助(湯の温度を調節する。状態に応じて滑り止めマット、シャワー椅子などを使用する。
EP(教育)
- ベッド周囲など安全な環境で生活できる方法を説明する。
- 困った時や、離床する際はナースコールを押してもらうように指導する。
- 転倒を起こしやすい要因とその予防方法を説明する。
- 身体活動や認知力の向上、精神的安定などのために日常活動を増やすことの必要性を説明する。
- 家族には安全な環境の必要性を説明する。
- 初めての治療や検査、手術などで環境が変化する場合は、事前に自分が置かれる環境について、具体的にイメージができ、セルフマネジメントできるように説明する。
転倒・転落の原因となる作用・副作用を示す薬物
眠気・集中/注意力低下
- 睡眠薬
- 抗不安薬
- 抗てんかん薬
- 麻薬
- 抗ヒスタミン薬
めまい・ふらつき
- 睡眠薬
- 抗不安薬
- NSAIDs
- 抗てんかん薬
- 麻薬
- 非麻薬性鎮痛薬
- 神経性疼痛緩和薬
- 抗がん剤
失神・起立性低血圧
- 降圧薬
- 利尿薬
- 糖尿病治療薬
- 抗うつ薬
- 抗精神病薬
せん妄状態
- パーキンソン病治療薬
- H₂遮断薬
- β遮断薬
- 麻薬
- 抗がん剤
脱力・筋緊張低下
- 筋弛緩薬
- 抗不安薬
視覚障害
- 抗コリン薬
- 抗うつ薬
パーキンソン症候群
- 抗精神病薬
- 制吐薬
- 抗うつ薬