看護技術

心嚢ドレーン(挿入介助・観察項目)

心嚢ドレーンの概要

心タンポナーデ・心嚢液貯留の治療は心膜穿刺による排液(心嚢ドレナージ)が唯一の治療です。

ドレナージの目的としては、心囊液、心タンポナーデにおける貯留液を体外に排出させ、心房、心室の圧迫を解除するためです。

また、排液の性状などから原因探索に用いる場合もあります。

心タンポナーデ(病態生理・観察項目)心タンポナーデに対する病態生理・観察項目を紹介します。...

心嚢穿刺介助・手順

  1. 侵襲を伴う処置であり患者・家族に処置の必要性・リスクなどを医師が説明し同意を得る。
  2. 患者誤認防止のためタイムアウトの実施。
  3. バイタルサインを測定し、心電図モニター、パルスオキシメーターを装着する。
  4. 物品の準備(下記参照)。
  5. 急変の可能性も考慮して救急カート・DC(除細動機)の準備。
  6. 患者の頭部を約30~45度挙上する。
    [理由]心嚢液を下方に集める。心嚢液の排液を促すとともに患者にとって呼吸が安楽となります。
  7. 必要物品を清潔台の上に展開していく。
  8. 術者の滅菌介助。
  9. 穿刺部位の周囲に穴あきドレープを敷く。
  10. 経胸壁エコーにて、心嚢液の貯留を確認。穿刺部位の選択。
  11. 穿刺部位の消毒。
  12. 穿刺の前にもう一度、タイムアウトを実施。
  13. 局所麻酔薬の投与。必要であれば鎮静剤もあらかじめ投与する。
  14. 剣状突起左縁、第7肋骨の裏をかすめるように刺入する。
  15. 軽く陰圧をかけながら針を進める。
  16. 穿刺中、看護師は患者の状態観察に努める。異常があればすぐに声に出して報告する。
  17. 医師が心嚢液を吸引する。
  18. 排液の量や性状を確認します。
  19. 吸引された排液が凝固するか確認する。
    [理由] 急性の出血が生じているかどうかを評価するために行います。凝固する場合は急性の出血、つまり心臓の血管や心腔の損傷により出血を来している可能性があります。反対に凝固しない場合は、出血後にある程度時間が経過している心嚢液だと言えます。
  20. 内筒を抜針する。
  21. 針の外筒を通して、先端の曲がったやわらかいガイドワイヤーを心膜腔内へ挿入する。
  22. ガイドワイヤーを用いて、ピッグテールカテーテルまたは直線でやわらかなカテーテルを挿入する。
  23. ガイドワイヤーを抜去して、排液チューブと接続する。
  24. 心嚢液を持続的に排出するためにカテーテルを留置する場合は、医師が無菌操作で排液チューブに排液バッグまたは排液ボトルを接続する。
  25. ナイロン糸で固定。
  26. 看護師は何針で固定されたか・固定位置を確認する。
  27. 滅菌Yガーゼを刺入部にはさみ、滅菌フィルムドレッシング材を貼付する。
  28. テープを用いてΩ型で2点固定を行う。
  29. 胸部X線検査でカテーテル先端が正常な位置にあることを確認し、合併症の有無がないか確認する。

穿刺部位

穿刺部位は一般的に、Larrey点(剣状突起と左肋骨弓の交点、もしくは剣状突起左縁と左肋骨弓の交差するくぼみ)からの剣状突起アプローチ(図)が選択されますが、他に心尖部や胸骨左縁から行われることもあり、最も穿刺しやすい場所が選択されますので穿刺場所は医師へ確認しましょう。

必要物品

  • 【マキシマルバリアプリコーション】マスク、ガウン、キャップ、滅菌手袋、滅菌プローブカバー
  • 【消毒】滅菌綿球、消毒剤(ポピドンヨード液もしくはクロルヘキシジンアルコール)
  • 【局所麻酔】1%リドカイン注射液、23Gカテラン針、10mlシリンジ
  • 【穿刺物品】心嚢穿刺用アスピレーションキット、滅菌ガーゼ、
  • 【固定物品】針付きナイロン糸、アドソン、ヘガール持針器、眼科剪刀、フィルムドレッシング材、滅菌Yガーゼ
  • 【持続吸引】排液バッグまたは排液ボトル、滅菌フィルムドレッシング材、固定テープ
  • 【急変時】救急カート、CD(除細動機)

観察項目

  • 継続的にバイタルサインなど、患者の全身状態を観察する。
  • 処置前、処置中、処置直後は状態が安定するまで、循環動態・呼吸状態・意識レベルを頻繁にアセスメントする。
  • 処置前後の心電図波形を確認する。(ST変化・重症不整脈の有無)
  • 心音減弱がないか。(心タンポナーデの徴候を確認する。)
  • 呼吸音(気胸、血胸の徴候を確認する。)
  • 排液量、性状(色、匂い、混濁)を確認する。
  • 尿量を確認する。
  • 処置終了直後に持続ドレナージ中の場合には、留置部位に異常がないかをX線写真にて確認する。
  • 処置終了後数時間以内に心エコーにて心嚢液の貯留の有無を検査されているか確認する。(ドレナージの有効性を確認する。)
  • 穿刺部位からの出血がないか頻繁に観察する。
  • 穿刺部位の感染徴候がないか。

合併症・注意点

  • 冠動脈や心筋の損傷
  • 不整脈,特に心室細動など致死的不整脈の発生
  • 血管迷走神経反射による徐脈・低血圧
  • 気胸
  • 内胸動脈損傷

吸引したものが凝固する血液だった場合は,心内腔あるいは冠動脈を穿刺したことを疑います。

急性出血で血管外へ血液が流出した場合、速やかに凝固系が働き、フィブリノーゲンがトロンビンによりフィブリンに変化するためです。

ショック状態においてカテコラミン投与があった場合、心嚢液の除去により心圧迫が解除されることで急激な血圧上昇をきたします。

急性出血が原因の心タンポナーデ(大動脈乖離など)の場合,再出血に注意が必要です。

心嚢ドレーン管理

心嚢ドレーン留置中の管理・看護のポイントは以下の記事をご覧ください。

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