病態・疾患

四肢外傷(観察項目・看護のポイント)

致死的な四肢外傷の概要

primary survey:致死的な四肢外傷の発見と処置

致死的な四肢外傷とは、開放性四肢主要血管損傷、切断肢、多発長管骨骨折などが挙げられます。

その中でも、四肢の動脈損傷に伴う、

動脈性の出血が遷延すれば出血性ショックに至る可能性があります。

  • 活動性の出血がある場合
  1. 活動性の出血には圧迫止血を行う。まずは用手でガーゼを用いて出血部位をピンポイントで圧迫し止血が確認できれば、ガーゼを当てた上に包帯を巻き圧迫を継続する。
  2. 出血が持続すればゴム製のエスマルヒ駆血帯や空気止血帯(ターニケット)を出血部位より中枢側(5~7.5cm)に巻いて止血を行う。
  • 活動性の出血が無い場合

上腕骨骨折(300~500ml)

大腿骨骨折(1000ml~2000ml)

下腿骨折(500~1000ml)の内出血があると言われいます。

抗血小板薬・抗凝固剤を内服している場合は特に注意が必要です。

受傷部位の腫脹には注意が必要です。

ターニケットの使用方法・観察項目

  • 圧設定の目安:上肢300mmhg,下肢600mmhg

駆血時間:30分程度。

虚血壊死による切断と虚血再還流障害に伴う筋区画症候群に対する筋膜切開の必要性が高くなるため。

駆血中の観察項目

  • 駆血圧
  • 駆血時間
  • 出血の状況
  • しびれ
  • 麻痺の有無
  • 皮膚の色調

観察項目・看護のポイント

secondary survey:骨折の発見と機能障害を残さないための処置

  • 体表上の外傷(開放創、打撲痕)、さらに骨折の伴う変形、腫脹がないか観察する。さらに圧痛、軋轢音を触診する。骨折が疑われる部位は2方向(正面・側面)のX線撮影を行い、骨折の有無を確認します。
  • 骨折部位およびその末梢側に障害があるときは、骨折に伴う末梢神経障害を疑う。
  • 筋力評価にはMMTが行われることが一般的です。
  • 四肢末梢の循環障害の有無は必ず初期診療時に確認する。
    (橈骨動脈・足背動脈の触知、皮膚の色調・温度)

骨折や脱臼に伴う変形部位では、神経や血管の圧迫を受けていることが多い。

用手的に整復しシーネで固定する。「原則として骨折部節を固定。関節は良肢位を確保して固定する。

  • 開放創のある部位での骨折は開放骨折の可能性があり、6~8時間以内(ゴールデンタイム)にジェット洗浄などの確実な創の処置を行わないと、感染・骨髄炎を合併する可能性が高くなる。

  • 感染の危険があるときは、受傷後3時間以内に抗菌薬(アミカシン、セファゾリン)を投与、破傷風予防策に則り破傷風トキソイドを投与する。

筋区画症候群(コンパートメン症候群)

コンパートメント症候群(筋区面症候群)とは、骨折や打撲などの外傷が原因で筋肉組織などの腫脹がおこり,その区画内圧が上昇すると,その中にある筋肉,血管,神経などが圧迫され,局所の循環不全のため壊死や神経麻痺を呈した状態です。

横紋筋融解症を併発する場合も!!

筋肉内の電解質(主にK)やタンパク質が大量に血液中に放出され致死的不整脈や腎障害を発症することもあります。

画像引用:https://www.zamst.jp/tetsujin/thigh_calf_shin/compartment-syndrome/

観察項目(5P)

  • 疼痛(pain)
  • 知覚異常(Paresthesia)
  • 麻痺(Paralysis)
  • 腫脹(Puffiness)
  • 脈拍喪失(Pulseless)
  • 蒼白(Paleness)

治療

緊急筋膜切開処置:筋区画内圧を下げることで循環障害を回避する。

圧挫症候群(クラッシュ症候群)

手足や体幹・腹部などが長時間圧迫を受け,筋肉細胞が崩壊するなどして細胞内からカリウムやミオグロビンが遊離し,急性腎不全や代謝性アシドーシスをきたす病態。

症状・観察項目

下肢の知覚・運動低下、ショック、黒色から褐色の尿(ポートワイン尿)、初期はしびれのみで、腫脹・疼痛は軽微で末梢の動脈触知も可能。

圧迫による知覚・感覚麻痺は脊髄損傷と混同されやすいため、肛門反射の確認も行う。血液検査では、CPKの上昇、高ミオグロビン血症、代謝性アシドーシスがある。

治療

急速大量輸液と全身管理。

輸液製剤としては生理食塩水や1号輸液などKを含有しないもの。

尿量200〜300ml/hを維持できるように、1L/h前後で輸液をする。

急性腎不全や高K血症には重炭酸水素ナトリウム(メイロン)投与にて尿アルカリを図る一方、持続的濾過透析、血液透析が有効。

四肢(肢指)切断

  • 切断肢指は生理食塩水で十分に洗浄した上でガーゼで被覆し、ビニール袋に入れ、ビニール袋ごと氷水につける。
  • 再装着を試みる場合は、速やかに手術。

まとめ

活動性出血を伴う四肢外傷は致死的になる危険性に留意し、速やかな止血と蘇生を要する。

血管損傷、神経損傷の早期診断、開放創の感染予防に留意する。

コンパートメント症候群、クラッシュ症候群に注意し、合併症の予防・早期発見のために、患肢の観察は継続的に注意深く行わなければならない。

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