看護計画

尿失禁(看護計画)

尿失禁は高齢患者では頻発する問題ですね。入院患者だけでなく在宅療養者でも尿失禁は大きな問題となる場合があります。

適切に介入することで患者さんの不快の解消・皮膚トラブル防止に繋がるだけでなく、介助者の負担軽減にもなります。今回は、尿失禁の看護計画について紹介したいと思います。

看護診断と要因

  • 高齢や運動機能障害のため、排尿動作が緩慢であること。
  • 手術や疾患による膀胱容量の減少と尿道括約筋弛緩。
  • 疾患や治療による炎症に伴う尿意の喪失。
  • 神経因性膀胱による尿意の消失。
  • 脳、脊髄疾患により、排泄信号の消失や排泄信号を認識する能力の障害。
  • 膀胱粘膜の器質的変化による膀胱の知覚過敏。
  • 慣れない環境に伴う精神的ストレス。
  • 情緒障害や注意力の低下。
  • 全身麻酔または脊椎麻酔による膀胱排尿筋、膀胱括約筋の機能低下。
  • 排尿しようとする動機の欠如。

目標

  • 尿意がわかる。
  • 尿意を伝えることができる。
  • 排尿パターンがわかり、早めにトイレに行くことができる。
  • 排尿パターンがわかることで尿失禁が減少する。
  • 尿失禁に対してセルフマネジメントができる。

看護計画

OP(観察項目)

  • VS
  • 意識レベル、心理状態
  • 排尿の状態:回数、性状、尿量
  • 尿失禁の有無
  • 排尿間隔
  • 尿意と膀胱充満感の有無
  • 残尿と残尿感
  • 下腹部の膨満感
  • 疾患・治療の状況・術式
  • 飲水、食事摂取量
  • 排尿動作:座位・立位バランス・手技動作・腹圧の程度
  • 尿意を感じたときの患者の表情や動作
  • ストレスの程度
  • 睡眠状態
  • 発熱の有無と検査データ:WBC、CRP、尿細菌検査、膀胱部X線
  • 排尿障害についての理解の程度
  • 麻酔の影響や安静度
  • 環境(これまでの排尿設備、和式・洋式・ポータブルトイの有無)
  • 陰部の皮膚状況
  • 使用している物品(パッドやおむつなど)
  • 尿道留置カテーテルの留置期間
  • 排便状況
  • 尿失禁に対するセルフマネジメント
  • 尿失禁のセルフマネジメントが困難な場合の支援状況

TP(ケア項目)

  • 排尿状態についてアセスメントする。
  • 排尿パターンに沿って排尿を促す。
  • 排尿環境を整える。
    • 必要時、ベッドサイドにポータブルトイレや尿器を設置する。
    • 必要時、トイレまでの順路に目印をつける。
    • 可能であれば、病床の交換などトイレまでの距離が近くなるようにする。
  • 衣服は着脱が容易にでき、排泄しやすい物を選択する。
  • 昼間に水分を摂り、就寝前の水分摂取を控えるよう促す。
  • 水分摂取を控えているために排尿量が少ないときには飲水を促す。
  • 内服薬を確実に与薬する。
  • 失禁をしても疾患や治療からくるものであることを説明し、悲観しないような声かけをし受容的態度で接する。
  • 排尿パターン、排尿動作などの排尿状態に応じたパットやおむつを選択する。
  • 失禁時には速やかにパッド・下着を交換し、陰部の清潔を図る。

EP(教育)

  • 尿意の有無にもかかわらず、定期的な排尿行動の必要性を説明する。
  • 尿失禁の持続に伴う水分の制限に対して、尿路感染や脱水予防のために水分摂取の必要性を説明する。
  • 清潔保持の方法について説明する。(パッド・下着が汚染した場合、そのままにせず交換すること)。
  • 高齢者には、尿失禁は避けられない加齢現象ではないことを強調する。
  • 尿道括約筋を強化するために骨盤底筋訓練の必要性と方法を説明する。腸内に宿便があることで骨盤底筋が弛緩する原因になることを説明し、便秘を予防する必要性を説明する。

排尿のメカニズム

  1. 膀胱内に尿がたまり (150〜200mLを超えると)膀胱内圧が上昇し仙骨2.3.4(膀胱脊髄中枢)に伝わる。
  2. 橋の自律排尿中枢を介して大脳前頭葉(大脳皮質)に伝わる。
  3. 大脳皮質の抑制がなくなり、自律排尿中枢(橋)に排尿の指令を出す。
  4. 小脳の膀胱・尿道調節系に排尿の指令を出す。
  5. 骨盤神経により排尿筋が収縮する。
  6. 骨盤神経により内尿道括約筋は弛緩する。
  7. 前頭葉→横隔神経・肋間神経腹壁枝により腹圧をかける。
  8. 陰部神経によって外道括約筋は弛緩し排尿する。

尿失禁の分類

  • 腹圧性尿失禁

特徴:運動・笑い・咳などで腹圧が上昇すると生じる突然の尿漏れ。主に中高年以降の女性に多い。

原因:加齢、出産、骨盤底筋群の低下、尿道括約筋の低下。

膀胱尿道の異常:尿道緊張性の低下。

  • 溢流性尿失禁

特徴:膀胱内の尿が溢れ出して漏れる。残尿感・排尿困難を伴う。腹圧を上昇させる動作がなくても失禁する。

原因:骨盤内手術、糖尿病、前立腺肥大、神経因性膀胱、薬剤。

膀胱尿道の異常:尿道の閉鎖・狭窄、膀胱の収縮力の低下。

  • 切迫性尿失禁

特徴:制御しきれない強い尿意と同時に漏れる。

原因:脊柱・脳の手術、前立腺肥大症、膀胱結石、膀胱炎・前立腺炎、過活動膀胱。

膀胱尿道の異常:膀胱の無制御の収縮。

  • 反射性尿失禁

特徴:尿意がなく、ある程度の尿がたまると漏れる。

原因:腰髄以上の脊髄疾患、脊髄損傷・腫瘍、脊柱管狭窄症。

膀胱尿道の異常:膀胱の無制御の収縮、尿道の不随意の弛緩。

  • 完全尿失禁

特徴:膀胱に尿をためることができずダラダラと漏れる。

原因:先天性奇形、外傷、手術損傷。

膀胱尿道の異常:尿道の損傷。

  • 機能性尿失禁

特徴:排尿したくともトイレまですばやく到達できないため、失禁してしまう。

原因:認知症、関節疾患、コミュニケーション問題。

膀胱尿道の異常:膀胱尿道の排尿機構は正常。

尿失禁の種類をアセスメントし原因に対して介入することがポイントです。

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