看護診断と要因
- 抗がん薬治療、放射線療法の骨髄抑制による白血球の減少
- 糖尿病による高血糖に伴う免疫能力の低下
- ステロイド使用による免疫能力の低下
- 熱傷による局所の皮膚欠損があり、組織のバリア機能の低下や喪失
- 侵襲的チューブ(中心静脈カテーテル、尿道留置カテーテル、ドレーン、気管カニューレ、動脈ラインなど)の存在
- 尿の停滞、反復する尿道留置カテーテル挿入
- 絶食や経口摂取量低下による唾液の分泌低下に伴う自浄作用の低下
- 気管切開口と創部の隣接による気管切開ロへの滲出液の流入
- 唾液や尿、便で創部が汚染しやすい状態
- 意識障害や麻痺による身体不動性があり、嚥下障害から誤嚥性肺炎や沈下性肺炎を起こしやすい状態
- 経口摂取不十分による低栄養状態
- 新生児のため免疫機能が未熟
- 乳幼児であり、感染対策が実施できないこと
- 不適切な個人衛生(口腔内衛生など)
- 悪性疾患などの病名告知後の情緒的な反応により理解が困難となりやすいこと
- 治療による侵襲や倦怠感など身体的苦痛が強く自ら感染予防が実施できない状態
- 妄想、幻覚、うつ状態のため衛生に対する関心がないこと
目標
- 感染の危険因子について理解し、感染予防が実施できる。
- 看護師や介護者の支援にて、感染予防が実施できる。
看護計画
OP(観察項目)
- VS・発熱の有無や熱型、循環動態(低血圧・頻脈の有無)、頻呼吸、SpO2の低下の有無。
- 悪寒、戦慄、チアノーゼ、冷感、頭痛、悪心など随伴症状。
- 敗血症性ショック状態(ウォームショック)の有無。
- 検査デー夕:WBC、顆粒球、CRP、Alb、TP、血糖值、細菌検査、腎機能、胸部X線。
- 創部の状態(疼痛や滲出液)。
- 皮膚穿刺部の発赤、熱感、疼痛、硬結の有無。
- 全身の皮膚の発赤や発疹、リンパ節腫脹の有無。
- 呼吸器感染症の有無(咳嗽、喘鳴、肺雑音)。
- 誤嚥の有無。
- 口腔粘膜や歯肉の発赤、腫脹、疼痛、白斑、舌苔の有無。
- 各チューブ・ドレーン刺入部の状態(発赤・滲出液・出血・疼痛・臭気)
- ドレーン類からの排液の性状、量
- 尿の性状、尿混濁、頻尿、排尿時痛の有無、陰部の瘙痒感。
- 肛門の発赤、亀裂、出血の有無、痔の有無、排便状態。
- 腹部症状の有無(腹痛、下痢、嘔吐、腹部膨満)。
- 病気、治療内容や抗菌薬の使用状況とその影響
- 食事摂取量や体重の増減、栄養状態。
- 既往の感染症や予防接種の状況。
- 告知の時期や内容および患者の病状。
- 疾病や治療に関する患者、家族の認識や理解度。
- 言動、表情、動作、行動、活気の程度。
- うがいや手洗い、マスク着用などの感染予防についての理解度とセルフマネジメントの内容。
- 家族や友人の伝染性疾患罹患の有無。
- 感染媒体との接触の有無。
【小児】
- 身体的発達(年齢、免疫能力など)、精神的発達の程度。
- 日常生活習慣の獲得状況。
- 親の養育態度。
TP(ケア項目)
- 感染を起こしやすい原因をアセスメントする。
- 原体の侵入を防ぐために、手洗いやうがい、マスクの着用を徹底する。
- 身体の清潔を保持する。
- 気管内吸引は清潔操作で行う。
- 食事や経管栄養注入中は、半座位・座位とし誤嚥を予防する。
- 肺炎のリスクがある場合は喀出を促す。
- 肺炎を予防するために計画的に体位変換を行う。
- 気管切開部のガーゼの交換を行う (各勤務1回および汚染時)
- 中心静脈カテーテル穿刺部の消毒と透明フィルムドレッシング材の交換を行う。
- カテーテルやチューブ類の交換時は清潔操作で行う。
- 末梢点滴の交換は原則72〜96時間以内に行う。
- 血液・血液製剤、脂肪乳剤を投与したチューブは輸液完了後、24時間以内に交換する。
- 排便コントロールを行う。
- 抗菌薬を指示された時間に確実に投与する。
- 生物の食品は細菌の付着のリスクがあるため持ち込みは禁止する。
- 栄養状態悪化を防止するため食事形態や嗜好を考慮し、食事変更する。
- 無菌室入室が必要な場合はマニュアルに沿って実施する。
- 白血病の告知後など患者が危機的な状況にある場合は心理状態に合わせて意図的に介入する。
- 倦怠感など苦痛が強いときには清潔が保持できるよう身の回り介助を行う。
- 泌物、排泄物、排液などで感染症の疑いがあれば医師の指示に基づき細菌検査を行う。
【小児】
- 児が1人で感染予防行動がとれない場合は、家族に援助を依頼するか医療者が援助する。
- 患児の好きなキャラクターなど興味のあるものを利用したり、プレパレーションを実施し感染予防行動が取れるように促す。
- 患児が感染予防行動をとることができたら、家族と一緒にしっかり褒めて自己効力感を高める介入をする。
EP(教育)
- 感染症の原因と危険性および、感染の予防方法に関して患者と家族に説明する。
- 感染予防行動の必要性と方法について患者・家族の認知、心理状態に応じた方法で説明する。
- 面会制限の必要性を説明し、患者や家族に理解と協力を得る。
- 罹患リスクのある感染症の症状について説明し、異常があればすぐに医療者に伝える・あるいは受診することを説明する。